民法改正に関連して ー 共同親権か単独親権の問題ではない ー 第1回区議会定例会
「共同親権か、単独親権か。」
こんな表現で、今回の民法改正が語られています。
この度の民法改正にむけては、親子断絶、実子誘拐などの過激な言葉が舞い、この法律が成立すれば、養育費の支払いも進み、面会交流ができるようになると改正を求める声があります。
その一方で、DV被害者支援を行う弁護士や団体からは、慎重な議論が必要である、と反対しています。法制審議会においては、これまで全会一致を慣行としてきましたが、今回は3人の反対があったにもかかわらず、多数決で決められ付帯決議がつきました。異例であるとのことです。
実態はどうなのでしょうか。
先日、私たち生活者ネットワークでは、DVや、性暴力の現場の支援を行う弁護士に、今回の民法改正についての話を伺いました。
そもそも共同親権か単独親権かという問題の立て方に違和感があるとのことです。離婚後の父母と子のかかわりをどう考えるかということであり、離婚後は、父母どちらかに主たる監護者を決めなくてはならないという規定の運用について、社会に誤解が生じているといいます。
知れば知るほど、今回の改正の要綱案は、通してはならないと思いました。
基礎自治体でできることは限られていますが、質問に取り上げました。
以下質問文全文を掲載します。
答弁は、まだ書き起こしをしていません。
でき次第、UP致します。
ご了承ください。
(2月22日夜追記しました。)
=====================================
通告に基づき質問してまいります。
まず、今年1月30日に法制審議会でまとめられた、離婚後も父母双方の親権を認める「共同親権を選べるようにする民法改正の要綱案」に関連して伺います。
この改正の報道により、DV被害を受けている方が、子連れ別居することを萎縮し、逃げ遅れることが生じています。「子育ては両親2人で行うもの。一方が子どもを連れていくことは、親子の絆を断絶させる誘拐だ。」と言われるからです。
DVを受けている方は、離婚後、共同親権から原則除外するとはしていますが、実際には、現状を把握できないままに家庭裁判所が、性虐待があるにもかかわらず、面会交流を進めるために「手紙やメールなどの間接交流から始める」など問題が多く、私たちは反対の立場をとっています。
家庭裁判所の調停で、別居中の親と子どもの面会交流が認められたケースは2020年には89.6%です。子どもが、おおよそ中学生になるまでは、「会いたくない」という気持ちは尊重されず、子どもが嫌がっても、一度決まった約束は簡単には覆すことはできません。面会交流は子どもためになるという考え方が、DVや虐待、子どもの拒否を軽んじたのです。
現場の支援を行う弁護士は「そもそも問題は、離婚後の父母と子の関わりをどう考えるかであって、共同親権か単独親権かということではない。社会に誤解が生じている」といいます。共同親権はその言葉のイメージに反して、何事に関しても双方の親2人そろわないと決定できず、別居している親に拒否権を与える制度でもあることに留意が必要です。
諸外国では共同親権が一般的であるといわれていますが、イギリス司法省は、2020年6月、離婚後、共同親権とすることは、DVや虐待が軽視され、家裁が子どもと同居する親に及ぶ危害を識別し対応できないことが警告されています。
今回の要綱案が強引にすすめられれば、DVや虐待の被害者の保護や、個人の尊厳を、ないがしろにされることにつながりかねません。
そこでお聞きします。
① 面会交流や、今回の民法改正においての原則共同親権では、DV被害者や子どもが不利益を被ることを指摘されていますが、江戸川区としては認識されているのでしょうか。
また、面会交流では、子どもの、会いたくないという気持ちの声はかき消されています。子どもの権利条約12条では「意見は、子どもの発達具合に応じて十分に考慮されなければならない」とあり、第2項では「子どもが自己に影響を与えるいかなる司法的・行政的手続きにおいても、意見を聴かれる権利を認めなければならない」と規定しています。この度の本区の新年度予算には、意見表明等の支援が盛り込まれています。
子どもの権利条例を持つ本区においては、子どもを権利の主体ととらえ、信頼できる大人とのつながりを増やし、子どもの意見を聴くために、どの年齢層においても安心して話をする場を作っていくことが大事だと考えます。
② 子どもの意見を聴くことについてどのようにその環境を整えていくのでしょうか。
離婚の相談やDV相談などは、基礎自治体で行われています。面会交流や養育費の取り決めは、現行法のままでもできることを知らされないままに、共同親権ということばだけが独り歩きしている今の状況を、知ることも必要なのではないかと思います。
また、行政が受ける相談の中では、本人がそれをDVだと気が付いていないこともあると伺いました。アンコンシャスバイアスがまだ残る日本においては根深い問題であり、人権に対する啓発をさらに進めていくことが必要です。
③ DV加害者がジェンダー平等の視点を学ぶ機会を得、DVをなくしていくことと、被害者も人権について知り、自らの自信を取り戻していける支援をどのように行っていくのか伺います。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
以下答弁です。
斉藤区長
本西議員のご質問にお答えしてまいります。
初めに、面会交流および共同親権のリスクについてというご質問でございます。面会交流や、民法改正における原則共同親権では、DV被害者や子どもが不利益を被ることを指摘されておりますが、そういったご質問ということで捉えております。
それを認識しているかどうかというご質問ということでございますけれども、今回の民法改正につきましては、法務大臣の諮問機関である法制審議会の家族法制部会において、要綱案が示された段階であり、今後、国会において審議されるものと聞いております。
要綱案の検討時には、議員がお話されたような面会交流の課題や、共同親権が導入された際のリスクなど、様々な議論がされていることを認識しております。
今後も国の動向を注視するとともに、国においては引き続き、両親の離婚後も子どもの利益が尊重され、区ににおいては引き続き、両親の離婚後も子どもの利益が尊重され、健やかに成長することができるように、適切に支援に取り組んでまいります。
続きまして、子どもの意見を聞くことと、DVにつきましては、担当部長からお答えをいたします。
子ども家庭部長。
民法改正に関連しまして、自治体にできることについて2点お答えしてまいります。
まず子どもの意見を聞くことについてお答えいたします。
全ての子どもは生まれたときから権利の主体として様々な権利を持っており、その一つとして意見表明権、これがございます。
これは全ての子どもが自由に自分の意見を表することができ、その意見は、年齢発達の程度に応じて十分に考慮されなければいけないというものでございます。
江戸川区子どもの権利条例では、この意見表明権、特に大切にしていく権利の一つとして位置づけておりましてこの考え方は、児童の権利に関する条約、それから国の子ども基本法とも一致するものでございます。
子どもの意見を聞くためには、まずこの子どもに権利があることを理解する、そこが大事だと思います。
そして、子どもの周りの大人がしっかりと子どもの意見を受けとめ、子どもが自由に意見を表明しやすい環境であることが重要だと考えております。
では様々な相談先で、子どもの意見を受け止める、受け止めていくことと、受け止めていくとともに、社会全体で子どもの意見を大切にするという考えが共有され、理解されるように引き続き周知啓発に努めてまいりたいと思っております。
次に、DV防止とDV被害者支援についてお答えいたします。
DVを防止するためには、いかなる場合においても、暴力が最大の人権侵害、そういう考えを、そういった考えは認識を高める教育や周知、啓発活動が重要だと考えております。
区では毎年、DVやモラルハラスメント、ジェンダーについての講演会や、児童への啓発活動といたしまして、区立中学校におけるデートDV予防出張講座、これを実施しております。
さらに、区ホームページやSNSでのDV予防動画の公開、それから人権男女共同参画情報誌カラフル、こちらの発行ですとか、区内施設各所にDV相談などの設置など啓発活動を行っているところでございます。
DV被害者の支援では、専門のDV相談室を設置し、継続的かつ丁寧な相談に応じ、メンタルケアが必要な場合には、保健所や健康サポートセンターに繋げるなど相談者の状態や相談内容に合わせた支援を行っているところでございます。
今後も関係機関としっかりと連携を図り、DV防止のための周知啓発活動やDV被害者支援に取り組んでまいります。
以上です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私からは次の意見を述べました。
民法改正の関連ですが、国で審議されることではありますが、要綱案が通れば、加害に加担することにも繋がりますので、当事者が相談に行けるところは自治体になりまして、十分な対応が求められるところです。
引き続き、DVを含め、離婚等のきめ細やかな相談に乗り、身の安全を図るための必要な対応は躊躇なくしていただくようお願いをいたします。
そして、大人の都合ばかりが優先され、子どもの意見は後回しにされがちです。
全ての大人が子どもの権利について知るだけではなく話を聞き、その意見を尊重することの実践をこれからも引き続きやってください。要望します。