学童保育と作業療法士の連携のおはなし

1月13日に開催された日弁連の「子どもの貧困と学童保育」のパネリストであった、岡山県学童保育連絡協議会会長の糸山智栄さんのお話を伺いました。とてもパワーのある方で、名刺交換をしたところすぐに連絡が! 23日に都庁でお話を伺いました。

糸山智栄さんを囲んで、生活者ネットの議員と。

「学童保育と作業療法士の連携」というとても興味深い発表をされたので、それをテーマに学習しました。

アメリカには学校に作業療法士がいる。だから子どもにも人気な職業。でも日本では病院にいて高齢者や障害者を看ている人というイメージ。

日本には現在8万人の作業療法士がいますが、そのうちの2-3%しか子どもにかかわる人はいないそうです。それは職場がないから。

糸山さんの同級生である首都大学東京大学院教授の小林隆司さんから、作業療法士は発達障害の子どもの支援の専門家ということを聞き、ひらめいたそうです。

「学童保育に作業療法士がいればいいんじゃない!?」と。

2015年12月まずはアンケート調査を実施しました。

岡山の学童保育に通う子どもの中には、7%くらいの発達障害児が通っており、疑わしいのではないかというグレーの子どもを合わせると約10%が、なんらかの支援を要する子どもであるそうです。現場からは具体的な対応の仕方にアドバイスを求める意見が多くありました。

そこで糸山さんは、岡山県備中県民局協働事業提案募集に応募し、見事採択され200万円の予算が付き、「地域で、チームで、長い目で。学童保育を核に発達障害があっても安心して暮らせる備中地域づくり」として実践を始めました。

本もあります。

夏休みに作業療法士5人1チームで、3時間、6つの学童を訪問し、観察を行い、その後指導員との懇談を行いました。

現場の指導員は日々対応を工夫してきたところですが、作業療法士の来訪によって指導員全員が良い意味の意識の変化が見られたそうです。指導員どうし、かかわり方の工夫を試しあい、初めは月1回の訪問でしたが、3か月に1度でもよい状況を維持できるようになりました。

全国に広めたいという糸山さんの行動力で、沖縄県でも作業療法士による保育園、幼稚園、小学校、学童に向けての巡回指導が、また、明石市でも臨床心理士による巡回訪問に加えて、作業療法士による指導員へのコンサルテーションが始まりました。

お話をお聞きし、作業療法士の子ども分野での可能性を感じました。

どこに問題があるのかを具体的に、これをやりたいならどうやるのかを実践できるようにするのが作業療法士の分野。それを閉ざされた空間での個別指導ではなくて、現実の生活の場面、集団とのかかわりの中でできるようにすること。

「インクルージョン教育と言われながら、学校でも分けられ、放課後も分けられているなんて、進むわけないじゃないの!」

これには「うんうん。まったく同感!」

具体的事例もお聞きました。

落ち着かせようとして、「座りなさい。」とじっとさせようとすること。それは子どもによってはかえって逆効果だということ。運動休憩ということがあり、子どもによっては動き回ることで落ち着きを取り戻そうとしているということでした。

また、読むことにとても労力を使う子どももいるということで、ひとりひとりに何が問題なのかを見極めたうえでの集団生活をおくるうえでの対応を考えていくというものでした。

指導員もかかわり方を工夫すること、周りにいる子どもたちも、人間関係を築ける距離感を学ぶ、もちろんその子自身も自分の行動を振り返り、経験を積み重ねることで、集団の中でも生活できるようになるというのです。

こうしたことの積み重ねにより、共生社会は進んでいきます。おとなになったからと突然一緒にしてもうまくいきません。

また、岡山県では子どもシェルターへの作業療法士の派遣も行っているというお話もありました。発達障害が育てにくさにつながり、虐待に至るケースもあるからです。

この日は大雪が降った翌日でした。

国の2017年度の予算では、障害時受入強化推進事業の充実として、障害児5人以上の受け入れ要件を3人以上の場合に拡充するとともに、医療的ケア児に対する支援に必要な職員配置等に要する経費の補助を行うこととなっています。ただし今は医療的ケア児に対する看護師配置となっています。

学童保育は各県各市によってさまざまな形態で運営されています。

江戸川区ではすくすくスクールとして行われています。

発達障害児の放課後は児童デイサービスで過ごすことと、分けるのではなく、必要な療育を放課後デイで、そして地域に暮らすみんなが、お互いを理解し、人間関係を築ける距離感を学び、共生できるようにしていくことが必要ではないでしょうか。