フランスにおける共同親権と子どもの権利

2024年7月8日(月)18:00~20:00から、子ども食堂で先駆的取り組みを行っている豊島子どもWAKUWAKUネットワークさんが、フランスの子ども家庭支援研究家 安發明子さんと、児童保護エキスパート マチュ・ギヨトさんの講演会を行いました。

 

その受講報告をします。

長文です。

 

 

日本において共同親権にすることについて大きな議論が起こっている。DVを受けている方から見れば、共同親権となることによるリスクが大きく現状では認められないこと、一方、ある日突然、子どもがいなくなった方はそのようなことが起こらないようにしたいと、双方の意見が対立している状況である。

安發さんとは2年前に知り合い、江戸川区内で講演会もしていただいた。その時はフランスの子育て支援という切り口であった。今回は、フランスでは1987年より共同親権となっている。何が日本と異なるのか「共同親権と子どもの権利」からの講演会であった。

フランスでは、日本とフランス人カップルの間に生まれた子どもの、両親の離婚による日本人親による連れ去りが大きく報道されており、EUの複数の国は何度も日本の共同親権について働きかけをし、2018年には26カ国のEU諸国の大使が日本の法務省に要請、2023年に再度9カ国の大使が法務大臣に共同親権を要請したとのことだった。

今回お話を伺い、共同親権であるためのしくみが日本と根本的に異なることが分かった。

日本では「親権」という言い方をしているが、フランスでは、市民法に親がしなくてはならない役割、親責任と定めている。どちらが親権を持つことが正しいということではなく、子どもの関心interestをどう守るかが大事だということだ。

心に残ったのは、子どもが虐待をした親の記憶を持ち続けるのではなく、一緒に釣りをするというような良い記憶を残していくこと。それを在宅教育支援という形で行っていることだった。

講演会タイトルの写真

講演会のタイトル

研修を受講し、ここがポイントだと思った3つは、一つ目は、シェルターは加害者用、2つ目は、母は父の認知を拒否も求めることもできること、3つ目は家族仲裁をする専門家があることだ。

1つ目、シェルターは加害者用ということ。

日本においてはDVを受けたら、安心して生活をするには身を隠すために逃げるしかない。しかしフランスでは、DVが疑われたら加害者側がシェルターに入ることになる。受けた側はそれまでの生活を続けることができるようになっているということだった。養育費の分担についても、出廷しなければ、しなかった方に多く課されるということであった。子どもが健やかに育つことができるようにということが主眼とされ、社会の在り方の根本的な考えが異なると感じた。

2つ目、母は父の認知を拒否することも求めることもできるということについては、そもそもフランスでは婚外子が65%である。日本は2%。婚姻して子どもを産むという前提に立っていない。出生時に、結婚、連帯市民協約というPACS、どちらもしていないカップルが1:1:1だそうだ。

2020年に子どもと同居している800万世帯の調査によると66%は子どもが両親と同居、25%は主に生活の拠点を片方の親の元に定めている。9%は片親のパートナーとその子どもなど再構成家族であるという。再構成家族を築いている父や母は伝統的な家族スタイルより高学歴の割合が高いそうだ。これは所得が高いからだという。ある程度の所得がないと再構成家族は無理ということのようだ。両親が離別している子どもの12%である48万人が両親の家に半分ずつ居住しているそうだ。

家族の形も、子どもが生まれたとき、母も父も認知するかどうかを選べるようになっている。さらに母は父親の認知を拒否する手続きをしたり、出産後に子どもの父に認知を裁判所に求めることができる。認知を求める場合、父が出廷しなかったり、DNA検査を拒否すると父であると決定され、子どもの18歳までの養育費が義務づけられる。認知する父は生物学的父である必要性はなく、子どもが成長してから認知を求め新たに親権者を得ることもあるという。

日本とはだいぶ様相が違う。

3つ目、家族仲裁をする専門家については、家庭内に葛藤がある場合、なるべく早くサポートに入るしくみがあるということだ。

まず、妊娠して産科にかかったときに、ソーシャルワーカーと心理士の妊娠初期面談で、社会面、心理面のチェックを行うことが義務になっているとのことだ。必要に応じて支援が入る。

そういえば一昨年の講演会では、安發さんがフランスで子育てすることになったとき、異国での日本人夫婦に対し手厚い支援があったと話されていた。

また、夫婦の仲が好ましくない状況になったとき、家族仲裁をする場所が身近にあるという。お金を払って弁護士に相談するのではなく、家族セラピーも公費で賄われている。

子どもにも自分の考えを話せるところがある。

これらのことを聞いて、家庭や家族支援というより、子どもも含め、ひとりひとりへの支援となっているように感じた。日本のこれまでなら、家庭内のことは立ち入らないというスタンスであったと思うが、フランスではかなり介入しているというか、そもそも、家庭という概念がうすく、個人への支援となっているのかもしれない。

私の友人からこんな意見をもらったことを思い出した。

「出生率が低下したから、日本はマッチングアプリだ、婚活だとなっているが、そもそもが、間違っている。結婚しなくとも、産み育てられる社会にすることじゃないの?」と。

そして、生まれた子どもが不利益をこうむらずにすくすくと育つことへの支援が大事だと思った。

共同親権となった日本において、子どもの権利が大事にされることや、そのしくみづくりを早急に整えていくことが必要だと思った。

安發明子さんの本「フランスの子どもの育ちと家族」の表紙

本も出版されてます