児童養護施設を見学して
昨年の10月に児童養護施設の調布学園を視察しました。
日中に訪問したため、子どもたちはみな学校へ行っており、静かでした。
児童養護施設は2歳から高校生までの子どもたちが生活する場です。ここに来る理由はさまざまで、親の行方不明・離婚・長期入院など、都の児童相談所から措置され入所します。近年は虐待によるケースも増加しています。
調布学園の敷地内には学童寮と幼児寮があり、地域に園外養護寮(グループホーム)があります。
低年齢の幼児が生活する幼児寮を外から見学し、年長幼児から高校生までが生活する学童寮は中に入らせていただきました。
寮舎は1寮約15名の児童の基本構成で、職員は、1寮舎に男性2名女性2名計4名、幼児寮は1寮舎に男性1名女性3名計4名が配置されています。
職員は全体で約90人、20~30代が7割。勤務は交代制で、3~5年で異動もあります。
職員全体で子ども全員をみる体制をとっており、大人そのものに対する慣れや信頼感を持ってもらうよう心がけ、また職員が長く働き続ける事を大切にしています。一般的に児童養護施設職員の継続勤務年数は短く、その中において調布学園は長く働いている職員が多いそうです。案内をしてくださった方も10年選手です。
1997年の児童福祉法改正により、児童養護施設の主要目的が、保護から自立支援へと転換されました。退所後の生活への支援はどのようになされているのかを伺いました。
2012年東京都自立支援強化事業の実施により、都内37の児童養護施設に自立支援コーディネーターが配置されました。
調布学園では第1、第2調布学園各1名ずつ配置されています。
その中の実践より、児童養護施設とその退所後の支援は十分ではない現実があるそうです。
特に、住居費については重い課題で、家賃を考慮してくれる大家さんは少なく、敷金礼金なしという物件も少ないということです。最近は衣食住のうち「衣」は何とかなるということ、ポイントは「住」と「食」だそうです。
退所後の生活に向けた学習の機会を、施設にいるうちに設けてはいるものの、本人たちもなかなか実感を持つことが難しく、退所後の家計管理については継続した支援が必要であるとのことでした。
学習に遅れがある子どもたちも多く、塾代支援もあるが、低年齢でのつまづきが重なっているとのことでした。
こうした子どもたちが18歳になると退所していきます。就職をする、あるいは進学をするにしても、住む場所を家に戻ることにするのか、独り立ちするのかなど、子どもによって様々です。
退所後、20歳未満の子どもたちが、社会的に自立するよう支援する自立援助ホームという施設がありますが、その数は十分ではありません。その場所も20歳となると出ていかざるを得ません。2016年5月の法改正で対象年齢を就学中に限り22歳の年度末までに引き上げ、今年度より施行しますが、全国自立援助ホーム協議会によれば、2014年時点で全国に約120カ所あり、暮らす子どもは約440人。全国で毎年児童養護施設から1,000人以上が退所する状況をみれば間に合っていません。
このような状況の中、住居を確保して退所したにもかかわらず、その後に仕事を失えば、家賃が払えず、住むところを追われます。たよりにできる実家もありませんから、たちまち行き詰まってしまいます。児童養護施設に連絡を取っていれば何らかの手立てはあるのかもしれませんが、児童養護施設の職員も定着していない状況があるため、頼れる人がいないことにもなりかねません。
退所後、地域で暮らしはじめたあとも、地域に頼れる人がいてしばらくの間は生活基盤が支えられる支援が必要です。